◆◆災害時の対応◆◆

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ここでは、被災した文化財への対応についてまとめました。

テレビや新聞で「文化財の被害」というと、国や、県、市町村の指定文化財の事を指す場合が多いですが、そうではありません。文化財とは、ひとにぎりの自治体の指定文化財だけを指すのではなくて、もっと広い意味があります。地域の中に残されてきた、日々の生活の歴史を表すものも大事に残していかなくてはなりません。昭和の生活を表す資料なども大切に残していきたいものです。

指定文化財だけを守ることが出来ても駄目で、地域の歴史の厚みを表すその他の文化財を守ることが必要です。先人の残した文化の証しである文化財が無くなってしまった復興は、その地域の歴史文化の厚みを半減させてしまうように思います。また、指定文化財などの上澄みの文化だけが残っても、もっと身近な文化財が残っていないと薄っぺらになってしまいます。重層的な文化が残ってこその復興です。

仏像・神像彫刻

●余震に備え、立像は毛布などの上に倒しておく。(打ち傷が一番修復しにくい為)

●雨や雨漏りには当てないようにする。(金箔や彩色は水に弱い為。)今回の地震は津波による被害もあります。濡れてしまった場合には、早めに陰干しで乾かして下さい。

●外れてしまった部材や折れてしまった部材はどんなに小さいものでもとっておき、無くさないようにまとめておく。(仏像の部品らしきものは残らずとっておく)

●脱落した部材はできるだけ早く専門家に接着し直してもらう。(脱落した部材はなくなってしまうことが多い)

●倒壊した建物の中から御仏像を救出する場合は、全ての部材を救出する。

●できるだけ塗り直し修理は行わないように。(自治体の指定文化財でなくても、全てが歴史のある貴重な御仏像です。ピカピカに新品同様にしてしまうと、それまでの歴史が覆い隠されてしまいます。))


御仏像は信仰の対象ということもあり、自治体では指定文化財以外は支援の手を差し伸べることが出来にくい場合もあります。調査が行き届いている訳でもありませんので、指定文化財制度の中では守りきれない現状があります。


カビなどが心配な場合はエタノール噴霧も一つの手ですが、蒸発する時に、木の水分を持って行ってしまうので、過剰にかけるのは禁物です。

 

古文書、台帳

地震の際には、土蔵なども被害を受けて、中で保存されてきたものを捨てたりされる危険があります。そういう古文書や民具、昭和の生活を示す資料、写真なども地域の歴史を示す資料となります。

片づける際には、自治体や博物館・資料館に声をかけて下さい。




●古文書や役場の台帳など、紙のものが水に浸かってしまった場合の処置法

水に浸かってしまった、古文書は、そのまま乾燥させるとページがくっついてしまい読むことが出来なくなってしまいますので、早いうちに乾燥処置する必要があります。一番いいのは、真空凍結乾燥法と言って、カップラーメンを作る時のようなフリーズドライの応用です。大掛かりな装置が必要です。埋蔵文化財処理施設なんかにはあります。

すぐに処置出来ない場合には、冷凍保存しておくのも一つの手です。一次的に冷凍倉庫に保管していただいて、順番に処置していきます。


一番原始的で確実な方法は、キッチンペーパーを押しあてて(最初はページ一枚一枚でなくともいい)、水を吸い取りっていく方法です。
臭いやカビが心配な時にはエタノールを噴霧しておくといいでしょう。
最終的にページが一枚一枚展開できるようになり、触った感じで水分を感じなくなったら完了です。陰干しして下さい。

大型の扇風機を何台も使って対応されている事例もありました。


歴史的な古文書ではなくとも、役場の様々な台帳が開けなくなってしまうと、今後の自治体運営にも支障をきたしてしまうかもしれません。

各地には歴史資料を保存するネットワークもありますので、ご相談されるとよいと思います。

建築:全壊指定されても、直すことができる。

震災で建築が全壊指定を受けても、直すことはできます。


赤紙の誤解 中越沖地震
被災地では、建築物に対して自治体が危険度を判定した紙を貼り付けます。
「検査済み」、「要注意」、「危険」の三種類です。危険な建築物には赤い紙が貼られるのですが、この紙の意味するところが誤解されやすいです。

この紙は余震などで、被害の拡大が予想される建物に貼られるもので、瓦が落ちそうだったり、クーラーの室外機が落ちそうだったりしているものにも貼られるので、損壊状況をそのまま反映しているものでもありません。
また、柱が折れるなどしている「全壊と認定された建築」でも、場合によっては補修が利くものもあります。

赤紙が貼られている建物でも、修理することによって、使う事が出来る建物も多い。

持ち主のかたが誤解して、解体を急ぐという事例が非常に多いので、働きかけが必要です。

建築の歴史的価値や修復の可能性が分からぬままに壊されてしまう建築が非常に多く危惧しています。

古い日本建築の構造体は、むしろ良い木材を使っており、補修が利きやすいです。傾いてしまった建築は曳き屋さんという種類の建築業者に頼んで直してもらった事例もありました。

実際、現行の建築基準法(耐震基準)に合致する木造建築はなかなかないのですが、きちんとメンテナンスしている木造建築は地震にも強いです。古い木造建築は現代の建築基準法の中での耐震基準には合わせることは出来ないので、そういう現代工法の中で仕事している建築家ですと、壊してしまうように指導されるかもしれません。注意が必要です。古建築を良く知っている建築家ならば、いい修理方針を示してくれると思います。

 

地域の博物館・資料館で、所蔵者で守りきれなくなった文化財の寄託を受ける活動

中越沖地震の際には、古文書や民具や生活資料が捨てられてしまったり、古物商が二束三文で買って行ってしまったり、片づけている最中に持って行ってしまう泥棒もいたりしました。そこで、柏崎市立博物館は、新聞やラジオ・テレビで、博物館が、文化財・資料の受け入れを行っていることを呼びかけました。

被災された家や、土蔵から様々な資料(民具や生活雑貨)。資料とは思えないものまで。昭和の資料もありました。様々に寄託を受けておられました。毎日電話で連絡が入ると伺って、資料を搬入され、会議室が一杯になっていました。
地域の博物館が、所蔵者で守りきれなくなった文化財の寄託を受けて、保存していくことも大きな責務だと思います。また、どういうものが資料となるのかを見抜く目を役立てるべきです。


新潟歴史資料救済ネットワークや県立文書館などでは、古文書を捨てないようにアナウンスをされていました。

捨てたり、古物商に売ってしまう前に、自治体の文化財担当にご相談下さい。


また、古い写真なんかも、是非捨てないで下さい。被災して壊されてしまった町の唯一の証になります。

何か、資料になりそうなものがありましたら、最寄りの博物館、資料館に御相談下さい。

片づけの際に注意すべきこと。

震災の片づけをする場合に、割合地震の記憶を無くしたいとの思いから、何でも捨ててしまわれる傾向が出ます。片づけを手伝うボランティアをされたかたのお聞きしたのですが、一応全て確認をとって廃棄されるそうなのですが、後々、「みんな捨てられてしまった」と悔やまれる事例が多いそうです。

ですので、なるべく捨てないで、落ち着いたら考えることにした方がいいです。

また、土蔵は地震に弱いので、壊れてしまっていることもあるかと思います。その場合には、片づける前に地域の博物館・資料館や各地の歴史資料保存ネットにご相談することをお勧めします。

貴重な資料が残されていることも多いです。(古文書だったり、民具だったり、美術的歴史的に価値のあるものだったり)

土蔵を片づけてあげるからという業者には気をつけて下さい。古物商が二束三文で持っていくこともあるそうです。

各地の文化財担当者、博物館、資料館では、アナウンスを強化して、「捨てないよう、売らないよう」ご相談を受け付けるようにする必要があります。地域の歴史史料が散逸したり、消滅する危険があります。

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