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仏像文化財保存に関する提言


これまで活動をしてきて仏像文化財を守るために変えていかなければならないと思うことを書き連ねてみました。


◎文化財を守る体制について

・地域格差として残る

それぞれの自治体によって、文化財に対する対応は、まちまちで、現在熱心に研究・保存活動を行っているところとそうでないところでは、数年後には格差として見えてきてしまうと考えます。

・線引きがまちまち
自治体によって指定文化財の線引きはまちまちで、江戸時代の像まで指定文化財として保護しているところと、そうでないところもあります。最近では、国の重要文化財に江戸期の像も指定されるようになったように、江戸期の像も見直されつつありますが、まだまだ進んでいません。

・調査をすると保存意識が高まる
文化財の調査が進んでいるところとそうでないところでは、文化財の保存に対する意識が格段に違いがあります。調査を進めることは非常に文化財保存に寄与することになります。調査が行われた地域には地域から保存活動の高まりが感じられます。

・指定文化財制度は諸刃の剣
文化財指定されていないと歴史的に重要なものではないという認識を持たれてしまいます。一方で悉皆的な調査がきちんと行われているわけではありませんし、江戸時代の御像は指定しないという自治体もあり、線引きはまちまちです。こういう状態の中では指定文化財制度の中では、守りきれない部分を秘めています。
特に災害時には公的機関は、歴史的な価値を認められた指定文化財以外の御仏像には援助をしにくい部分があります。御仏像は信仰の対象ですので、特定の宗教への援助となってしまうからです。
したがって災害の際に新聞記事で「文化財には被害はなかった」という記事を見ても、その全容は全く分からないのが実際のところです。調査や指定が進んでいないからです。

・指定文化財の前段階の制度
東京都の台東区のように指定文化財の前段階として「登載文化財」として台帳を作り、囲い込みを行うのも一つの方策です。修復に関する補助はないが、台帳に載せるために指定文化財と同じようにきちんと調査研究が行われ、地域全体の文化財の囲い込みができるものと思われます。

・文化財保存の専門職を
自治体の文化財保存担当職には、歴史文化財の保存研究の専門職として長めの期間見ていただけるような体制をとるのが望ましいです。学校の先生の出向ということが多いのですが、やはり先生は生徒に教えるのが好きなかた方々です。歴史学や文化財が好きな専門知識のある人に任せていただけるのが一番合理的かと思います。

・県にそれぞれ一人は各分野の美術史家を
できればそれぞれの県内の博物館や大学などに、美術工芸・建築のそれぞれの分野の美術史の専門家を置き、県内の文化財の掘り起こしや市町村からの相談に応えられるような体制が望ましいです。地域の歴史・文化財を再発見して、地域の発展に寄与していくことができます。観光、まちおこしにも寄与できます。

・文化財という言葉の使い方
「指定文化財」「重要文化財」という言葉は、本来「文化の生み出したもの」という広い意味を持っていた「文化財」という言葉を非常に限定的に高いレベルのものという認識を与えてしまっています。むしろ、国宝、県宝、市宝、町宝というような呼び方の方が良いのでは?

・地域単位で歴史文化財の掘り起こしを
市町村レベルだけではなく、もっと小さな単位でそれぞれの地域独自に地域の歴史文化財の掘り起こしを行うという活動も必要ではないかと考えます。

・全ての像の写真記録を
調査レベルの低い報告書でも全ての像の写真を撮り、それをまとめておくことでその後に研究者の目に止まるということもありえます。
特に仏像彫刻に関しては悉皆調査は有益です。この場合選ぶことなく全ての像を記録するということが必要です。往々にして聞くのが、「ついでに寄ったところに良い像があった」です。美術史の先生に県指定の像について話を聞くと、調査のついでによったらこの像があったということをよく聞きます。専門外のかたが調査先を選んで行うということは行うべきではありません。

・調査には仏像彫刻の専門家を
調査には是非、仏像彫刻史の専門家や仏像修復家にご依頼下さい。市町村史の編さんの際には、他の専門分野の方が仏像彫刻についても当たられている場合が多く、調査の意味がない場合もあります。

・地域の歴史民俗資料館から発信を
地域にある民俗資料館などからの情報発信をもっと行えば地域の歴史文化財の啓発に繋がるのではないかと考えます。合併しても合併前の市町村の郷土資料館は割合残されています。全国にはものすごい数あると思います。たいがい、何十年もそのままの展示がほこりをかぶっているような状態です。
こういうところから地域の歴史を深めるような活動や情報の発信ができれば、よいのにと思うことがあります。パソコンがあれば、HPも作れますし、最近はパネル展示なんかも簡便に作れますし、やれることはいくらでもあると思います。地域の写真のデジタルアーカイブなんて地域に根ざした事を、そういう館から行うこともいいかと思います。

・地域の郷土史・地域史研究会を盛り上げよう
我々のような修復家なんかよりも、地域の歴史を研究されているかたの方が実は、文化財の保存に影響力があります。是非仏像彫刻にも眼を向けて下さい。地域の歴史を物語る像が残されているはずです。どこでも高齢化しているように聞いていますので、是非若者も参加して下さい。

・眼のつけどころ
それぞれに価値を見出して保存してゆくことが大事。
民具や紙史料などに関しては、大系的に保存するとか、まとめ方とか見せ方で、ただの紙切れも地域の歴史を表す史料になります。


◎子供たちへの働きかけ

・修学旅行には是非京都・奈良に
地域の歴史や文化を再発見するには、京都・奈良に一度は行っておくことがお勧めです。いいものを見ておくということが大事です。高校生の時には理解できないかもしれませんが、少し経ったら、その経験は必ず良い影響を与えるものです。

・学校のデッサン用の石膏像に仏像彫刻を
美術室やデッサン室には必ず西洋の彫刻の石膏像が並んでいます。その中に仏像彫刻も仲間に入れて下さい。彫刻の造形としても引けはとりません。全国の美術室に配るような活動も必要かと思います。

・美術教育の中に日本の古典芸術の分野も
これまでの日本の美術教育は西洋中心に行われてきたように感じます。特に彫刻の分野では、「仏像は彫刻ではない」「立っていない」という評価が行われてきました。
もう少し日本の古典芸術の造形や技法を見直してもいいのではないかと考えます。
木彫技術は日本が誇る技術です。ここまで沢山の木彫が残されている国はありません。この日本は「木彫の国」と言えます。仏像彫刻の古典的な構造・技法を学ぶことで、1000年持つ彫刻作品ができるはずです。



◎その他
仏像彫刻は、文書の残されている近世以前の歴史を知る手がかりとなりえます。その地域の信仰、経済、人口の高まりを表したりもします。

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